翻訳コラム by 石川正志
トップページに定期的に連載している「翻訳コラム」を、バックナンバーとしてまとめました。このコラムでは、金融の世界で使われる独特の表現を一つずつ取り上げ、説明いたします。

金融業界では固有の表現や用語が使われており、辞書などをみても、なかなか適切な訳語が見つかりません。証券・運用業界での実務経験、経済新聞の購読、業界紙の読み込みなどを通じて、「この英語はこの日本語を充てるとピッタリくる」という事例を紹介して参ります。
keep an eye on ~ 目を光らせる

keep an eye on~という表現を取り上げます。金融関連の文章で、よく登場します。

先日英国で行われた主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議でも、通貨安競争を回避するという観点から、米国の財務長官が、円相場の動きに対して keep an eye onするという趣旨の発言を行いました。

日銀による量的・質的金融緩和が円安誘導を狙ったものではないか、各国が輸出競争力強化のために、自国通貨の切り下げ競争に走るのではないか、といった懸念が背景にあります。

このkeep an eye on~を何と訳すか。

金融用語にしては、やや珍しく、辞書に載っている意味が割とそのまま使えるように思います。

「~に目を光らせる」
「~に目を配る」
「~に目配りする」
「~を注視する」
「~に配慮する」
「~に留意する」
「~に細心の注意を払う」

など、いろいろ考えられます。

冒頭の円安の事例でしたら

「各国当局は、日銀の大規模な金融緩和が円安誘導を狙ったものでないか、目を光らせている」

といった使い方になります。

このkeep an eye on~は、運用報告書の「今後の運用方針」などでも良く使われます。例えば

「欧州債務危機の展開に目配りしつつ、資産配分を機動的に変更して参ります」

「2013年3月期決算発表の内容を注視しつつ、個別銘柄の選別を進めて参ります」

「割安に放置されている銘柄がないか、常に目を光らせています」

といった具合です。

若干ニュアンスが異なりますが、悪材料や弱材料に対し、その動向を注視している場合、

「~に神経を尖らせる」

というような表現もあります。

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