翻訳コラム by 石川正志
トップページに定期的に連載している「翻訳コラム」を、バックナンバーとしてまとめました。このコラムでは、金融の世界で使われる独特の表現を一つずつ取り上げ、説明いたします。

金融業界では固有の表現や用語が使われており、辞書などをみても、なかなか適切な訳語が見つかりません。証券・運用業界での実務経験、経済新聞の購読、業界紙の読み込みなどを通じて、「この英語はこの日本語を充てるとピッタリくる」という事例を紹介して参ります。
Cyprus - キプロス

今回は、やや「趣味」の領域に入ることを書きます。翻訳上、気にしなくて良いと言えば、気にしなくて良い内容だからです。

昨年末から今年2013年1-3月期にかけて、「キプロス」という国名が、突如、メディアの紙面を賑わすようになりました。何故、メディアに登場するようになったかは、お分かりかと思いますので省略します。

金融翻訳をしている人であれば、欧州の政治・経済動向や欧州債務問題との絡みで、「キプロスへの金融支援」、「キプロス問題」、「キプロス情勢」といった言葉を使う場面が、ここ数ヶ月、何度かあったことでしょう。

私がここで取り上げたいのは、この「キプロス」という国を説明する文言です。

そのまま「キプロス」で、もちろん問題はないわけですが、訳文によっては少し説明を入れたいと思うときがあります。新聞や雑誌では、以下の言い方をよく見かけます。

「小国キプロスの危機」
「欧州の小国、キプロスの混乱」
「小国問題に揺れる欧州」

確かに国土面積の面でも、経済規模の面でも「小さな国」ではありますが、「小国」というは、私個人的には、何だか失礼な言い方のように思えてなりません。日本だって、面積の面では、ロシアや米国、豪州、中国等との対比において「小国」でしょう。

私は以下の表現の方が好ましいのではと、メディアの紙面を読みながら、思っています。

「地中海の島国キプロス」

「地中海に浮かぶ島国キプロス」

キプロスの銀行の預金者に課税をするというのですから、大変な話だとは思います。

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