翻訳コラム by 石川正志
トップページに定期的に連載している「翻訳コラム」を、バックナンバーとしてまとめました。このコラムでは、金融の世界で使われる独特の表現を一つずつ取り上げ、説明いたします。

金融業界では固有の表現や用語が使われており、辞書などをみても、なかなか適切な訳語が見つかりません。証券・運用業界での実務経験、経済新聞の購読、業界紙の読み込みなどを通じて、「この英語はこの日本語を充てるとピッタリくる」という事例を紹介して参ります。
overly/heavily - 強気一辺倒/売り一色

株式用語辞典をパラパラとめくると、面白い表現が沢山出ています。

「ドテン」ですとか、「往って来い」など、株の世界にはユニークな表現が少なくありません。

これよりもう少し一般的な表現ではありますが、金融や株式関係の文章で使われる独特な言い回しというものがあります。

先日、以下のような英文を目にしました。

Investor sentiment has changed from overly bullish last year to the other end.

文字通り訳すと、「投資家のセンチメントは、昨年の過度の強気から、もう一方の側へ変化した」ということですが、overly bullishを少し意訳して、「強気一辺倒」という言葉を使ってはどうかと思いました。

「投資家のマインドは昨年までの強気一辺倒から今や正反対に振れている」

という感じです。「一辺倒」は別に金融、株式の世界だけの言葉ではありませんが、相場の流れを示す表現として、よく使われるように思います。

もう一例挙げましょう。

The US stocks were heavily sold.

一般的には「米国株式は過度に売り込まれた」という訳になりますが、より「らしい」表現として、

「米国株は売り一色となった」

という言い方もできると思います。(これも少し意訳になりますが。)

翻訳原稿の内容や種類、読み手、顧客の好みなどを考慮する必要があり、いつでも使えるわけではありませんが、上記の「強気一辺倒」や「売り一色」のような、少しユニークな表現を使えるようにしておくのも、訳の表現の幅が広がって良いのではないかと思います。

金融、経済、株式関連の新聞や業界紙、レポートなどを読み込んでいると、こういった表現が頭に浮かぶようになる。自身の経験から、そう思います。

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