翻訳コラム by 石川正志
トップページに定期的に連載している「翻訳コラム」を、バックナンバーとしてまとめました。このコラムでは、金融の世界で使われる独特の表現を一つずつ取り上げ、説明いたします。

金融業界では固有の表現や用語が使われており、辞書などをみても、なかなか適切な訳語が見つかりません。証券・運用業界での実務経験、経済新聞の購読、業界紙の読み込みなどを通じて、「この英語はこの日本語を充てるとピッタリくる」という事例を紹介して参ります。
dislocation - 市場の変調/転調

ここ数ヶ月間、あれこれ訳を考えてきた用語の一つがdislocationです。

よく「市場(market)」と一緒に、credit market dislocationとかstock market dislocationという感じで登場します。

辞書の最初に書かれている意味は「転位」とか「脱臼」ですが、マーケット・レポート等の文章では、市場が混乱している、或いは価格や相場が下落している、という意味で使われているように思います。

金融翻訳者の皆さんは、おそらく「混乱」を使っているのではないでしょうか。

私も当初、「混乱」を使っていたのですが、何となく一般的過ぎて、ピッタリとこない気がしていました。

もう少し強い意味で、「今までの流れが狂う」、「想定されていた水準にズレが生じる」というニュアンスで訳せないかと考え、一つ思いついたのが「変調」です。

stock market dislocation
株式市場の変調

「変調」は金融の文章でよく使われる言葉で、今までの流れが崩れるというニュアンスが出て、「混乱」よりも的確ではないかと思います。

もう一つ、最近出会った表現は、市場の「転調」です。

国語辞典上の「転調」意味は、音楽の調を変えること、例えば曲の途中でハ長調からイ単調に変えることを指すようですが、「金融市場」と組み合わせて使っている例を見かけ、「dislocationの感じが出ているな」と感じました。

異論もあるかと思いますが、dislocationの訳として、「市場の変調」または「市場の転調」はどうかと、今は考えています。

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